沖縄の自然

春夏秋冬 西表島~冬~

2019.08.05

2024.01.31

海が荒れ、北から風が吹き始め、原色の森が色あせ、重い足取りで冬がやってきました。
亜熱帯の島に、冬はゆっくりとやってきます。
沖縄の方言でミーニシと言われる北風が吹き、動物達にとって厳しい季節になりました。しかし、この島の気温が10度以下になることは滅多にありません。冬の平均気温も18度以上あるのです。
冬になったとはいえ、この島の生物たちの営みが消える事はないのです。
森では冬鳥のアカハラやシロハラの姿を見る事が出来ます。
冬になっても鳥たちは活発に活動しているのです。
カンムリワシの幼鳥が電線に停まっていました。白い産毛はまだ残ってはいるものの、エサも自分で取る事ができるのです。
優雅に舞う姿はもう立派な大人。これから彼は後世に命を繋いでいかなければいけません。
島で一年中見る事が出来るコノハチョウ。森の風景と一体化しています。
羽を閉じた時の姿が木の葉に似ていて、風景の一部となることからこの名前がつきました。
冬になって気温が下がると、カグラコウモリの活動性が非常に下がってしまいます。
洞窟の底にはグアノというコウモリ達の糞が堆積しています。
カグラコウモリは洞窟の天井にぶら下がり、あまり動かずに冬を越します。
カグラコウモリとは異なり、ヤエヤマコキクガシラコウモリは冬でも飛び回っています。
夜になるとエサを求めて洞窟の外に飛び出して行くのです。
リュウキュウユビナガコウモリは集団で天井にぶら下がります。
夜になるとエサを求め、洞窟を飛び出し、林を飛び回って昆虫などをとらえます。
この島には冬に光る蛍がいます。その代表が最近発見されたイリオモテボタル。
イリオモテボタルは雌だけが発光器を持ち、淡い光を放ちます。
雌は発光器のあるお尻の部分を振り上げて発光させ、雄を誘い交尾をします。
雄は一般的な形をしていますが、光ることが出来ません。
オオシママドボタルやヤエヤマボタルなどがこの島の冬に見る事が出来る蛍です。
この島の冬はとても短く、あっという間に去ってしまいます。
現在、島は開発と自然保護という相反する二つの問題のはざまで揺れています。
この島に住む生物は多く、彼らは島と共に歩んでいくしかないのです。
冬の力が弱まってきました。
セマルハコガメの交尾の季節です。下に潜り込んでいる雄が首を揺らし上に乗っている雌に求愛をしています。
雄は雌の前に回り込み、鼻から出る汁を振り掛け、甲羅に噛みつきます。セマルハコガメの独特の求愛のポーズです。雄は雌の後ろに回り込み、交尾に至ります。
次の世代に向けて、雌の中には新しい命が宿るのです。
これから風が穏やかになり、この島にまた春が訪れます。新しい命が次々を生まれ、島がまた賑やかになるのです。
気の早いアカショウビンが春の訪れを知らせています。
島にまた、春がやってきました。
遠い昔、大陸より渡った生物たちは、独自の進化を辿りました。
遠い昔、黒潮の恩恵を受けたこの島で、生物たちは命を育みました。
遠い昔、島は全てを見つめてきて、島は全てを見守ってきました。
語りつくせない島の輝き、それは様々な命の輝きなのでしょう。

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